税理士報酬ガイドライン−税理士業務報酬規定の経過と考え方

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税理士業務報酬規定の経緯と考え方

過去の経緯
 昭和26年6月、戦後の我が国の財政運営を支える一つの制度として、それまでの税務代理士法が廃止され税理士法が新しく成立した。この時の税理士報酬に関する規定は、国税庁長官が定める最高限度を超えてはならないという、行政が主体的に規制するものであった。昭和41年には報酬規定の全面的見直しが図られ、一部、税理士会に報酬についての自主的決定機能が認められたものの報酬の最高限度に関しては原則的に従前のままであった。
 しかし、昭和55年の税理士法改正により、税理士会による税理士報酬の自主的決定権が確立し、それに基づき「税理士業務に対する報酬の最高限度額に関する規定」が新しく設けられた。いわば現行税理士報酬規定の誕生である。
 この報酬規定の存在意義は、税理士業務の公共的役割に鑑み、第一に税理士の正常な業務活動を保障し、第二に納税者保護の観点から、納税義務者に対する税理士の不当な利益追求を排除することにあり、その意味で当該規定は税理士会の会員に対する指導・監督権限の一機能を担うものとして運用されてきたところである。

規制緩和の流れ
 近年、わが国の規制緩和推進が、世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)等の発効する国際条約に基づいて大きく進展してきた。平成10年3月、政府は自己責任原則と市場原理に立つ経済杜会を目指すとともに経済のグローバル化に対応する観点から規制緩和三か年計画を発表し、あらゆる分野での規制の見直しを図ることとした。その中で、資格者団体が定める報酬規定のあり方について、規制改革委員会(現在の総合規制改革会議)は、平成12年12月の見解において、資格者が受けられる報酬も市場における競争、需要と供給のバランス及び資格者の合理化努力の結果により決定されるべきものであると
し、さらに基本的な考え方として、
(1) 報酬規定が利用者の利便のために設けられているとしても、また、資格者団体が報酬基準を明示することが独占禁止法上直ちに間題とならない場合であっても、個々の資格者の原価計算の要素を考慮せずに、一律に基準額を示すことは適切ではなく、資格者団体が基準額を示すことに代えて各資格者が独自の報酬額を算定できるよう、報酬についての基本的な考え方や原価計算の方法を示すことにとどめるべきである。
(2) 各資格者が独自に適切な報酬額を算定し事務所に掲示し、委嘱者に詳細に説明すれば、利用者の報酬についての不安を解消することは可能であり、さらに、各資格者の報酬額を広告記載事項として認めることにより、利用者にとって資格者についての情報が不足しているという情報の非対象性を解消でき、利用者は資格者に業務を委嘱する前に、あらかじめおおよその報酬額を知り、同業他者と比較することが可能となり、また、合理化により低廉な報酬で優れたサービスを提供できる資格者は、その業務を拡大することも可能となるのではないか。
(3) 報酬基準は、最高価格を抑制する上限規制的に機能する場合がある一方で、基準額より下がらないという最低価格を定める機能をも有しており、報酬基準が報酬の値崩れに対する防波堤になっているとの指摘もあり、さらに、報酬基準自体は目安であるとしても、当事者による報酬額の交渉はそこを出発点とするため、結果として資格者間でほぼ横並びの報酬になり、廉価なサービスを提供するための真の努力が行われているとはいえない、との理由等から、資格者団体の報酬規定を会則記載事項としないことを提言した。
 これを受け、政府は資格制度に関し、特に資格者が受ける報酬については資格者間の競争活性化の観点から、資格者団体の会則において報酬規定を設けることを廃止する基本方針を定めた。

税理士法改正
 このような規制緩和の要請を受け、本会は、平成12年9月21日の理事会において、今次の税理士法改正要望項目に、報酬に関する規定を会則の絶対的記載事項から削除することを決定した。このような要望を受けた改正税理士法は、平成13年5月25日成立し、平成14年4月1日の施行が確定した。
 これにより平成14年3月31日をもって、現行税理士報酬規定は廃止となり、同年4月1日以降、会員は自由な意思の下、自己責任と説明責任に基づいて報酬額を算定し委嘱者に請求することとなる。

公正取引委員会の要請
 一方、今後の資格者団体の報酬等に関する活動のあり方については、公正取引委員会が独占禁止法上での取扱いを明確にすることとし、平成13年10月24日、「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」を公表。この中で報酬に関する活動について、独禁法上問題となる場合とは、資格者団体が、
(1)会則に報酬に関する基準を記載することが法定されている場合において、
 @定めた報酬額について値引きを禁止し、又は、値引きを報酬額の一定割合の
 範囲内と定めて報酬を収受させること
 A報酬基準の設定が法定されている資格者の業務以外の業務に係る報酬につ
 いてまで基準を設定すること
(2)会則に資格者の収受する報酬に関する基準を記載することが法定されて
 いない場合において、標準額、目標額等、会員の収受する報酬について共通
 の目安となるような基準を設定すること
であるとし、
 独禁法上問題とならない場合とは、
(1) 需要者、会員等に対して過去の報酬に関する情報を提供するため、会員から報酬に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して、客観的に統計処理し、報酬の高低の分布や動向を正しく示し、かつ、個々の会員の報酬を明示することなく、概括的に、需要者を含めて提供すること(会員間に報酬についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。また、価格制限行為の監視のための情報活動に該当するものを除く。)
(2) 原価計算や積算について標準的な費用項目等を掲げた一般的な方法を作成し、これに基づいて原価計算や積算の方法に関する一般的な指導等を行うこと(会員間に報酬や積算金額についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)であることを明らかにした。
 これらの意味することは、資格者団体の会員に対する指導・監督機能が従来に比して大きく変化したことを表すとともに、今後の税理士会が行う報酬に関する会員指導は、これらの考え方を充分踏まえた施策であることが求められているといえよう。

今後の税理士報酬の考え方
 今回の改正において、税理士法第1条(税理士の使命)の達成を支える税理士業務の無償独占的機能については、従前どおり堅持された。このことは税理士業務の公共性が支持されたものであり、これに伴う報酬については、改正決議に当たっての衆参両議院における「税理士業務に係る報酬の最高限度額に関する規定が撤廃されることに伴い、規制改革委員会の指摘を踏まえつつ、不適切な報酬設定が行われることのないよう特段の努力を払うこと」との附帯決議において、納税者への配慮が強く期待されていることを念頭に置く必要がある。
 以上のことから、本会は税理士法第1条(税理士の使命)の実現を基本的姿勢としつつ、上記の独禁法上問題とならない考え方に沿って、不適切な報酬設定が行われないように、「税理士業務報酬算定に関するガイドライン(指針)」を策定し、税理士会会員の報酬算定基準作成の一助となるべく税理士会に示すものである。
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