税理士報酬ガイドライン−契約と説明責任

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 わが国の規制改革の推進は、同時に司法制度改革の実現へと向かっている。
 これらの背景には、国民の権利意識の確立が熟成される状況があり、契約社会や訴訟社会の形成がなお一層進展の方向にあると思われる。
 司法制度改革による法曹人口の増加によって事件処理が迅速になる反面、今まで事件とされなかったものが多数、事件として扱われることが予想される。特に、民事事件については弁護士の増加に伴い契約に関わる事案などが多くなるものと考えられるところである。
 従来から、税理士は主に口頭による契約によって業務を行っている実態がある。そのため業務の受任範囲が曖昧となり委嘱者との紛争の大きな原因となっていることは否めない事実である。さらに、今次の法改正によって税理士報酬規定が廃止されることは、報酬の拠りどころがなくなることであり、自ら報酬についての計算や説明もない曖昧なままの受任は紛争の原因を増やす結果となる。これらのことから、今後、税理士は、これからの社会の方向や国民の権利意識の高まりを念頭において業務及び報酬の契約を締結し、受任業務範囲の明確化と業務内容及び報酬等に関する説明責任を果たす必要がある。
 契約と説明は、相互信頼と安心の確保につながる証となる。

 なお、現在までの税理士損害賠償事件の判例のうち、特に参考となる事例の判示事項を掲載したので参考にされたい。
(1)東京地裁昭和57年(ワ)第11232号、東京地裁昭和62年2月24日判
 決東京高裁昭和62年(ネ)第597号報酬金請求控訴、同附帯控訴事件東
 京高裁昭和63年5月31日判決(原判決一部変更)(上告)【判例時報1279
 号19頁】
《判示事項》
  5年間の期間を定めて税務会計事務の処理を委任した側から、その期間中
 に委任契約を解除することができるかが争われた事件で、税理士に対する期
 間の定めのある委任契約を民法第651条第1項に基づく解除をできるとし
 昭和55年度分の記帳代行報酬及び決算報酬と昭和56年5月までの記帳代行
 報酬5年間の期間を定めて税務会計事務の処理を委任した金70万円余を支
 払えとした。
(2)東京地裁平成3年(ワ)第2757号報酬金請求事件東京地裁平成4年4
 月23日判決(一部認容)(控訴)【判例タイムズ803号223頁】(税理士報酬
 規定の研究TKC出版平成7年1月20日9頁)
《判示事項》
  報酬額について明確な約束がなかった場合の税理士報酬額の算定基準に
 ついて、原告(税理士)と被告(委嘱者)間の委任につき報酬を支払う合意
 の契約があるなしに係らず、前払金の授受により合意があったとすることが
 明らかである。また、報酬額について明確な約束がない場合、特段の事情が
 ない限り、税理士会の会則で定めた報酬の最高額に関する規定を上限として、
 事案の難易、処理に要した時間労力等を考慮し相当と認められる額の報酬を
 支払うとの合意が黙示になされたものと認めるべきであるとした(税務代理
 報酬を報酬規定の最高限度額の65%、税務調査立会い料報酬は1日5万円、
 相続税申告における遺産総額の加算は、報酬規定の加算限度額の80%相当と
 判示した)。
(3)名古屋地裁平成10年(ワ)第224号報酬金請求事件名古屋地裁平成
 12年3月24日判決(一部認容)(TAINSコードZ999−0031)
《判示事項》
 原告(税理士)と被告(委嘱法人)の土地の特別土地保有税及び固定資産
 税の申告等の税務代理委任につき報酬額が争われた。
 原告(税理士)は、4,800万円を請求した。ちなみに業務報酬の最高限度
 額は、7,219万円と考えられる。裁判所の判断では、原告の報酬は3,900万
 円をもって相当な報酬額とするとした。この裁判においても原告の報酬額に
 つき検討するに、報酬額について明確な合意がなかった場合については、特
 段の事情がない限り、税理士会の会則で定めた報酬の最高額に関する規定(税
 理士法第49条の2第2項7号)を上限として、事案の難易、処理に要した時
 間労力等を考慮し相当と認められる額の報酬を支払うとの合意が黙示にな
 されたものと認めるのが相当であるとした。
 
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